これまでに学んできた文字式のルールは、実はすべて「現実世界の問題」を解決するための強力な道具です。「文字式の活用」とは、文章で書かれた問題や身の回りの現象を、数学の言葉(文字式)に翻訳して、答えを導き出すトレーニングです。
文章問題を解く手順は、基本的にいつも同じです。この流れをマスターしましょう。
手順①:問題文の中の、数量の関係を読み取る。
手順②:何を文字で表すか決めて、ルールに従って式を立てる。
手順③:立てた式を計算したり、その意味を説明したりする。
例題1:代金の問題
問題
1個120円のりんごをx
個、1個70円のみかんをy
個買ったときの合計の代金を、文字式で表しなさい。
手順① 関係の読み取り:合計の代金は「(りんごの代金) + (みかんの代金)」で求められます。
手順② 式を立てる:
- りんごの代金:(1個の値段) × (個数) = (円)
- みかんの代金:(1個の値段) × (個数) = (円)
これらを足し合わせます。
$$120x + 70y \quad (円)$$
120x
と70y
は同類項ではないので、これ以上まとめることはできません。これが答えです。
例題2:速さ・時間・道のりの問題
問題
a
kmの道のりを、時速4kmで歩いたときにかかる時間を、文字式で表しなさい。
手順① 関係の読み取り:小学校で習った「み・は・じ」の関係を思い出しましょう。「時間 = 道のり ÷ 速さ」です。
手順② 式を立てる:
- 道のり:
a
(km) - 速さ:
4
(km/時)
公式に当てはめると、
$$a \div 4$$
となります。文字式のルールに従って、割り算は分数の形で書きます。
$$\frac{a}{4} \quad (時間)$$
単位を忘れずにつけるようにしましょう。
例題3:整数の性質
問題
偶数と奇数を、それぞれ文字n
を使って表しなさい。(ただしnは整数とする)
手順① 関係の読み取り:
- 偶数とは「2で割り切れる数」、つまり「2の倍数」のことです。
- 奇数とは「2で割ると1余る数」、つまり「偶数より1大きい(または小さい)数」のことです。
手順② 式を立てる:
ある整数n
を2倍すれば、必ず2の倍数(偶数)になります。
偶数: $$2n$$
奇数はその偶数より1大きい数と考えられます。
奇数: $$2n+1$$
このように文字式を使うと、具体的な数字ではなく「偶数という性質そのもの」を表すことができ、様々な証明問題などで活躍します。