前回、方程式を解くために「等式の性質」を使って、両辺に同じ数を足したり引いたりしましたね。実は、その操作を一瞬で終わらせる便利な裏技があります。それが「移項(いこう)」です。
「項を移す」と書く通り、項をイコール(=
)の反対側へ引っ越しさせる操作です。
項は、符号を反対(プラス ↔ マイナス)にすれば、イコールの反対側に移動(お引っ越し)できる!
移項は魔法じゃない!その正体とは?
「符号を変えるだけで反対側に移動できるなんて、なんだかズルい!」と思うかもしれません。しかし、移項は魔法ではなく、前回学んだ「等式の性質」をショートカットしているだけなのです。
方程式
$$x + 5 = 12$$
を例に、2つの方法を比べてみましょう。
方法1:等式の性質を使う(丁寧な方法)
左辺の+5
を消すために、両辺から5を引く。
\(x + 5 – 5 = 12 – 5\)
\(x = 12 – 5\)
方法2:移項を使う(ショートカット)
左辺の+5
を、符号を-5
に変えて右辺に引っ越しさせる。
\(x = 12 – 5\)
見ての通り、途中の計算が一行減りますが、最終的な式の形は全く同じになりますね。移項とは、この「両辺に足したり引いたりする操作」を頭の中で済ませて、一気に結果だけを書く便利なテクニックなのです。
移項を使って式を整理しよう
移項の目的は、「文字の項を左辺に、数字の項を右辺に集めて、式を整理すること」です。
例題
方程式 \(6x – 7 = 2x + 9\) を移項を使って整理しなさい。
手順①:文字の項(xがつく項)を左辺に集める
右辺にある2x
を、符号を-2x
に変えて左辺に移項します。
\(6x – 2x – 7 = 9\)
手順②:数字の項を右辺に集める
左辺にある-7
を、符号を+7
に変えて右辺に移項します。
\(6x – 2x = 9 + 7\)
手順③:両辺の同類項をそれぞれまとめる
$$4x = 16$$
これで、前回学んだ「両辺を4で割る」だけで解けるシンプルな形になりました!移項は、複雑な方程式を解くための最初の、そして最も重要なステップです。