前回、「合同な図形は、対応する辺の長さと角の大きさがすべて等しい」と学びました。しかし、2つの三角形が合同かどうかを調べるために、6か所(3つの辺と3つの角)すべてを比べるのは大変です。
実は、たった3つの条件のうち、どれか1つでも満たされていれば、その2つの三角形は「合同である」と断定できます。この魔法のようなショートカットが「三角形の合同条件」です。
三角形の合同条件(3つの呪文)
この3つの条件は、図形の証明問題で最もよく使う道具です。呪文のように完璧に覚えてしまいましょう。
条件①:3組の辺がそれぞれ等しい
3つの辺の長さがすべて同じ三角形は、形も大きさも1種類しか作れないため、必ず合同になります。
$$AB=DE, \quad BC=EF, \quad CA=FD \quad ならば \quad △ABC ≡ △DEF$$
条件②:2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい
2つの辺の長さと、その2辺に挟まれた角の大きさが同じ三角形も、必ず合同になります。「間の角」というのがポイントです。
$$AB=DE, \quad BC=EF, \quad ∠B=∠E \quad ならば \quad △ABC ≡ △DEF$$
条件③:1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しい
1つの辺の長さと、その辺の両端の角の大きさが同じ三角形も、必ず合同になります。
$$BC=EF, \quad ∠B=∠E, \quad ∠C=∠F \quad ならば \quad △ABC ≡ △DEF$$
合同条件の使い方
これらの合同条件は、図形問題で「2つの三角形が合同であること」を証明するときの根拠として使います。
合同であることの示し方
問題の図形の中から、等しい辺や角を根拠(仮定や図形の性質など)と共に3つ探し出し、それが3つの合同条件のうちのどれに当てはまるかを示します。
例題
下の図で、\(AB=AD, CB=CD\)のとき、\(△ABC\)と\(△ADC\)は合同であると言えますか?
【考え方】
2つの三角形 \(△ABC\) と \(△ADC\) に注目します。
① 問題文から、\(AB=AD\) (1組目の辺)
② 問題文から、\(CB=CD\) (2組目の辺)
③ 辺ACは、両方の三角形に共通で使われています。したがって、\(AC=AC\) (3組目の辺)
これら3つの情報から、「3組の辺がそれぞれ等しい」という合同条件が使えることがわかります。
【結論】
合同条件「3組の辺がそれぞれ等しい」を満たすので、\(△ABC ≡ △ADC\) であると言えます。