「三角形の合同条件」という最強の武器を手に入れた今、私たちは身の回りにある様々な図形の「なぜ、そうなるの?」という秘密を解き明かすことができます。この作業を数学の世界では「証明(しょうめい)」と呼びます。
今回は、最も基本的な図形である「二等辺三角形」と「平行四辺形」を例に、その性質が本当に正しいことを、合同を使って証明してみましょう。
二等辺三角形の性質と証明
定義と性質
- 定義:2組の辺が等しい三角形。(例:AB = AC)
- 性質:① 2つの底角(ていかく)は等しい。(例:∠B = ∠C)
② 頂角の二等分線は、底辺を垂直に二等分する。
例題:「二等辺三角形の2つの底角は等しい」ことの証明
【証明のすじみち】
角を分割する補助線を1本引いて2つの三角形を作り、それらが合同であることを示せば、対応する角が等しいと言えますね。
【証明】
△ABCにおいて、頂角∠Aの二等分線をひき、底辺BCとの交点をDとする。
△ABDと△ACDにおいて、
仮定(もともと二等辺三角形であること)から、
AB = AC ・・・ ①
∠Aの二等分線をひいたことから、
∠BAD = ∠CAD ・・・ ②
ADは2つの三角形に共通な辺なので、
AD = AD ・・・ ③
①, ②, ③より、「2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい」ので、
△ABD ≡ △ACD
合同な図形では、対応する角は等しいので、
∠B = ∠C (証明おわり)
平行四辺形の性質と証明
定義と性質
- 定義:2組の向かいあう辺が、それぞれ平行な四角形。(AB // DC, AD // BC)
- 性質:① 2組の向かいあう辺は、それぞれ等しい。
② 2組の向かいあう角は、それぞれ等しい。
③ 対角線は、それぞれの中点で交わる。
例題:「平行四辺形の2組の向かいあう辺は、それぞれ等しい」ことの証明
【証明のすじみち】
対角線を1本引いて2つの三角形を作り、それらが合同であることを示せば、対応する辺が等しいと言えます。
【証明】
平行四辺形ABCDにおいて、対角線ACをひく。
△ABCと△CDAにおいて、
平行線の錯角は等しいので、AB // DCより、
∠BAC = ∠DCA ・・・ ①
同様に、AD // BCより、
∠BCA = ∠DAC ・・・ ②
ACは共通な辺なので、
AC = CA ・・・ ③
①, ②, ③より、「1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しい」ので、
△ABC ≡ △CDA
合同な図形では、対応する辺は等しいので、
AB = CD, BC = DA (証明おわり)