確率の基本をマスターしたところで、最後はそれらを活用して、少し複雑な問題や現実世界の出来事を考えてみましょう。特に「少なくとも〜」という言葉が出てくる問題には、非常に強力な裏ワザが存在します。
確率の文章題を解くための手順
複雑な問題でも、基本的な考え方は同じです。次の手順で、情報を整理していきましょう。
確率を求める手順
- 樹形図や表を使って、起こりうるすべての事象(分母)が何通りか求める。
- 条件にあてはまる事象(分子)が何通りか、同じく数え上げる。
- \(\frac{分子}{分母}\) で確率を計算する。(必要なら、確率の積の法則や和の法則も使う)
例題:玉を元に戻さないくじ引き
例題1
5本の中に当たりが2本入っているくじがあります。Aさん、Bさんの順に1本ずつくじを引きます。引いたくじは元に戻しません。このとき、2人とも当たりを引く確率を求めなさい。
【考え方】
これは「Aが当たりを引く、そして続けて、Bも当たりを引く」という連続した試行なので、確率の積の法則を使います。ただし、くじを元に戻さないため、2回目の確率が1回目に影響される点に注意が必要です。
① Aが当たりを引く確率
5本の中から2本の当たりを引くので、確率は \(\frac{2}{5}\) です。
② Aが当たった後で、Bが当たりを引く確率
Aが当たりを1本引いたので、残りのくじは4本、そのうち当たりは1本になっています。したがって、その条件のもとでBが当たりを引く確率は \(\frac{1}{4}\) です。
③ 2つの確率を掛ける
$$確率 = \frac{2}{5} \times \frac{1}{4} = \frac{2}{20} = \frac{1}{10}$$
答え:\(\frac{1}{10}\)
裏ワザ:起こらない確率を利用する「余事象」
「少なくとも1回は〜する確率」という問題が出たら、それは裏ワザの合図です。直接求めるのは大変ですが、「1から、一度も〜しない確率を引く」と、驚くほど簡単に計算できます。
余事象(よじしょう)の考え方
$$(Aが起こる確率)= 1 -(Aが起こらない確率)$$
例題2
コインを3回投げて、少なくとも1回は表が出る確率を求めなさい。
【考え方】
「少なくとも1回は表」の反対は、「1回も表が出ない」、つまり「3回ともすべて裏」です。この「すべて裏」になる確率を求めて、1から引いてみましょう。
① 3回ともすべて裏が出る確率を求める
1回目に裏(\(\frac{1}{2}\))、そして2回目も裏(\(\frac{1}{2}\))、そして3回目も裏(\(\frac{1}{2}\))が出る確率なので、積の法則を使います。
$$P(すべて裏) = \frac{1}{2} \times \frac{1}{2} \times \frac{1}{2} = \frac{1}{8}$$
② 1から引く
すべての事象が起こる確率(1)から、今求めた「すべて裏」の確率を引けば、それ以外の「少なくとも1回は表」の確率が求められます。
$$P(少なくとも1回は表) = 1 – P(すべて裏) = 1 – \frac{1}{8} = \frac{7}{8}$$
答え:\(\frac{7}{8}\)