中学数学の図形の単元で最も有名で、最も強力な定理の一つが、この「三平方の定理(さんへいほうのていり)」です。古代ギリシャの数学者ピタゴラスが発見したとされることから、「ピタゴラスの定理」とも呼ばれます。
この定理は、直角三角形の3つの辺の長さの間に成り立つ、驚くほどシンプルで美しい関係を示しています。
三平方の定理
三平方の定理
直角三角形の、直角をはさむ2辺の長さをそれぞれ\(a, b\)、斜辺(しゃへん)の長さを\(c\)とすると、次の関係が必ず成り立つ。
$$a^2 + b^2 = c^2$$
【言葉の覚え方】 (短い辺)² + (もう一つの短い辺)² = (一番長い斜辺)²
この定理のすごいところは、直角三角形の2辺の長さが分かっていれば、残りの1辺の長さを必ず計算で求めることができる点です。
例題
直角をはさむ2辺の長さが3cmと4cmの直角三角形の、斜辺の長さを求めなさい。
斜辺の長さを\(x\)cmとします。三平方の定理にあてはめると、
$$3^2 + 4^2 = x^2$$
$$9 + 16 = x^2$$
$$25 = x^2$$
\(x\)は2乗すると25になる数、つまり25の平方根です。辺の長さに負の数はないので、\(x > 0\)です。
$$x = 5$$
答え:5cm
三平方の定理の証明
この美しい定理が本当に成り立つのか、図形を使って証明してみましょう。証明方法は数多く知られていますが、ここでは正方形を使った有名な証明を紹介します。
図形を使った証明
【証明のすじみち】
大きな正方形の面積を、2つの違う方法で表して、それらをイコールで結びます。
- 大きな正方形の面積(その1)
1辺の長さが \((a+b)\) なので、面積は \((a+b)^2\) です。 - 大きな正方形の面積(その2)
中の図形を足し合わせる方法です。真ん中にある、1辺が\(c\)の正方形(面積\(c^2\))と、4つの合同な直角三角形(面積\(\frac{1}{2}ab\)が4つ)の合計です。
面積は \(c^2 + 4 \times (\frac{1}{2}ab) = c^2 + 2ab\) となります。 - 2つをイコールで結ぶ
どちらも同じ正方形の面積なので、イコールで結べます。
\((a+b)^2 = c^2 + 2ab\)
左辺を展開すると、
\(a^2 + 2ab + b^2 = c^2 + 2ab\)
両辺から\(2ab\)を引くと…
$$a^2 + b^2 = c^2$$
となり、三平方の定理が証明できました!