円とその内部に引かれた「弦(げん)」には、円の中心から垂線を引くことで明らかになる、美しく重要な性質があります。この性質は、二等辺三角形の性質と深く結びついており、証明問題や弦の長さを求める問題で頻繁に利用されます。
円の中心と弦の性質
弦と垂線の定理
円の中心から弦に引いた垂線は、その弦を垂直に二等分する。
なぜそうなるの?(証明のアイディア)
上の図で、円の中心Oと弦の両端A, Bをそれぞれ結ぶと、△OABができます。
OAとOBはどちらも円の半径なので、長さが等しくなります。つまり、△OABは必ず二等辺三角形になります。
二等辺三角形の性質に「頂角の二等分線は、底辺を垂直に二等分する」というものがありました。中心Oから弦ABに垂線を下ろすことは、これと同じ状況になり、弦ABは点Mで垂直に二等分されるのです。
この定理は、逆の言い方も成り立ちます。
定理の逆
円の中心を通り、弦を二等分する直線は、その弦に垂直に交わる。
例題で性質を確認しよう
例題
半径が5cmの円があります。この円の弦ABの長さを8cmとするとき、円の中心Oと弦ABとの距離を求めなさい。
【考え方】
求めたいのは、図の線分OMの長さです。
中心Oから弦ABに垂線OMを引くと、弦ABは二等分されるので、
$$AM = 8 \div 2 = 4 (cm)$$
次に、直角三角形OAMに注目します。斜辺OAは円の半径なので5cmです。
ここで「三平方の定理」を使います。OMの長さを\(x\)cmとすると、
$$OM^2 + AM^2 = OA^2$$
$$x^2 + 4^2 = 5^2$$
$$x^2 + 16 = 25$$
$$x^2 = 9$$
\(x > 0\) なので、\(x = 3\)。
答え:3cm