円と直線が1点だけで交わる「接線」には、中学1年生で学んだ基本性質に加え、中学3年生では「接線の長さ」に関する新しい性質が登場します。この性質は、図形問題の補助線を引くヒントになったり、証明問題で辺の長さが等しいことを示す根拠になったりします。
接線の性質のおさらい
まずは、最も基本的で重要な接線の性質を思い出しましょう。
性質①:半径との関係
円の接線は、その接点を通る半径に対して、必ず垂直(⊥)に交わる。
新しい性質:接線の長さ
円の外にある1つの点から、その円に向かって接線を2本引くことができます。このとき、その点から2つの接点までの距離には、次のような性質があります。
性質②:接線の長さ
円の外の1点からその円に引いた2本の接線の長さは、等しくなる。
上の図では、点Pから円Oに引いた2つの接線が、それぞれ点Aと点Bで接しています。このとき、線分PAの長さと線分PBの長さは必ず等しくなります。
なぜそうなるの?(証明のアイディア)
点Pと円の中心Oを結び、さらに半径OAとOBを引くと、2つの直角三角形(△PAOと△PBO)ができます。
この2つの三角形は、
- POが共通な辺(斜辺)
- OA = OB(円の半径)
- ∠PAO = ∠PBO = 90°(接線と半径の関係)
となり、「直角三角形の斜辺と他の一辺がそれぞれ等しい」という合同条件を満たすため、△PAO ≡ △PBO となります。合同な図形の対応する辺は等しいので、PA = PB が証明できます。
例題で性質を確認しよう
例題
下の図のように、△ABCの3つの辺が円Oに接しています。点P, Q, Rがそれぞれの接点で、AP=3cm, BQ=5cm, CR=2cm のとき、△ABCの3辺の長さをそれぞれ求めなさい。
【考え方】
「円の外の1点から引いた2本の接線の長さは等しい」という性質を使います。
- 点Aから引いた接線なので、AQ = AP = 3cm
- 点Bから引いた接線なので、BR = BQ = 5cm
- 点Cから引いた接線なので、CP = CR = 2cm
この情報を使って、△ABCの各辺の長さを計算します。
- 辺ABの長さ = AQ + BQ = 3 + 5 = 8cm
- 辺BCの長さ = BR + CR = 5 + 2 = 7cm
- 辺ACの長さ = AP + CP = 3 + 2 = 5cm
答え:AB=8cm, BC=7cm, AC=5cm