これまでに学んだ円の様々な性質(円周角の定理、接線の性質など)は、図形の証明問題において強力な「根拠」となります。一見すると複雑な図形でも、円の性質を利用することで、角が等しいことや、三角形が合同・相似であることを鮮やかに証明できます。
この単元では、円の性質をどのように証明のパーツとして組み込んでいくかを学びます。
円の性質を証明の武器にする
証明問題を解くときは、常に「今使える武器(根拠)は何か?」を考えることが大切です。円が絡む問題では、次の武器が特に有効です。
円の証明でよく使う武器リスト
- 同じ弧に対する円周角は等しい → 2つの角が等しいことを言うときの根拠になる。
- 直径に対する円周角は90° → 直角を見つけるときの根拠になる。
- 弧の長さが等しければ、円周角も等しい → 角が等しいことを言うときの根拠になる。
- 円の接線と半径は垂直に交わる → 直角を見つけるときの根拠になる。
例題で証明の流れを確認しよう
例題
下の図のように、円Oの周上に4点A, B, C, Dがあります。線分ACとBDの交点をPとするとき、△PAB ∽ △PDC であることを証明しなさい。
【証明のすじみち(頭の中の作戦会議)】
ゴールは「△PAB ∽ △PDC」を示すこと。そのためには、相似条件「2組の角がそれぞれ等しい」が使えそうだな。
証拠集め:等しい角を2ペア探そう。
- 図を見ると、∠APBと∠DPCは対頂角だ!対頂角は常に等しい。(証拠1)
- 次に、∠PAB(つまり∠CAB)に注目すると、これは弧CBに対する円周角だ。同じ弧CBに対する円周角が他にもないか探すと… あった!∠CDB(つまり∠PDC)だ。円周角の定理より、この2つは等しい。(証拠2)
よし、証拠が2つ集まった。作戦が決まったので、証明を書いていこう。
【解答】
△PABと△PDCにおいて、
対頂角は等しいので、
∠APB = ∠DPC ・・・ ①
弧BCに対する円周角は等しいので、
∠PAB = ∠PDC ・・・ ②
①, ②より、2組の角がそれぞれ等しいので、
△PAB ∽ △PDC