1. 減衰振動とは 動機
振り子・ばね・ねじり振り子のような復元力を持つ系に、 速度に比例する抵抗(粘性抵抗)が加わった運動を、まとめて減衰振動と呼びます。
抵抗の強さによって振る舞いが質的に変わる、というのがこの系の面白いところ
- 抵抗が弱いと:振動が続きながら、振幅だけがじわじわ減る
- 抵抗が強いと:振動せず、平衡位置にゆっくり戻る
- ちょうど境目では:最も速く戻って、振動しない(臨界減衰)
この記事の目標は、運動方程式 1 本からスタートして、これら 3 種類の解を順序立てて導くこと。
2. 運動方程式と標準形 定義
ばねにつないだ質量 の物体に働く力は次の 2 つ
- 復元力:変位 に逆らう、Hooke 型
- 抵抗力:速度 に逆らう、粘性型
ニュートン則 に代入して整理すると、 と が線形に組み合わさった、いわゆる2 階の線形微分方程式
このまま扱ってもよいが、両辺を で割って 2 つのパラメータでまとめると見通しがよい
ここで定義した量
は抵抗係数(減衰の速さ、単位は )、 は固有角振動数(抵抗がないときの振動数、単位は rad/s)。 以降の議論はこの 2 つの量だけで進みます。
注:ねじり振り子なら 、(慣性モーメント)、 (ねじり係数)に置き換えるだけで同じ式になります。
3. 特性方程式 — 試行関数を代入する 派生関係
こういった「変数の関数とその微分が線形に並ぶ、係数が時間によらない」タイプの微分方程式を解く定石は、指数関数を試す。 理由は、指数関数 は何回微分しても 倍がかかるだけで形が変わらず、 各項を共通の でくくれるから。
試行関数
代入 () して でくくると、 なので残るのは についての二次方程式 ── これを特性方程式と呼びます
解の公式から
根号の中身は 。これが正・ゼロ・負のどれかで、解の質が変わります。
特性方程式
を、運動方程式
に試行関数 を代入することで導いてみよう。
▶ 解答を見る 解答
を微分:
これを運動方程式に代入:
で括ると:
なので、括弧内が 0:
これが特性方程式。 は二次方程式の解として求まる。
4. 判別式で 3 ケースに分かれる 派生関係
判別式
の符号で次の 3 通りに分類
- (): 減衰振動 ── 根が複素 → 振動する解
- (): 臨界減衰 ── 重根 → 振動と非振動の境目
- (): 過減衰 ── 根が異なる実数 → 振動せず減衰
以下、各ケースで一般解を導きます。3 ケースを並べて描いたのが下の図(初期条件 、)。
5. (a) 減衰振動の解 (D < 0) 派生関係
根号の中身が負なので、ここで正の実数 を導入して整理
複素指数解 を Euler の公式で実部・虚部に分けると、 線形独立な 2 つの実数解 が得られます。一般解は線形結合
振幅と位相の形に書き直すと、よく見る形になります()
振幅が で減衰しながら、角振動数 で振動する解。 なので、減衰があると振動の周期は長くなる。
減衰振動の場合 () について、特性方程式の根が
になることを確かめ、複素指数 を実数の 解
の形に整理する手順を書こう。
▶ 解答を見る 解答
根の確認:判別式は なので根号の中が負。
ここで と置く(これは正の実数)と、
したがって:
実数解への整理:2 つの複素指数解は
物理量 は実数なので、Euler の公式 を使って実部・虚部に分け、独立な 2 つの実数解として
を取り出す。一般解は両者の線形結合:
意味:振幅が で減衰しつつ、角振動数 で振動する解。
振動数 は減衰がないとき () の より小さい(減衰のせいで戻ってくるのに時間がかかる)。
6. (b) 臨界減衰の解 (D = 0) 派生関係
判別式がゼロのとき、特性方程式は重根を持ちます
ところが、これだと指数関数解は ただ 1 つ。 2 階微分方程式の一般解には互いに独立な 2 つの解が必要なので、もう 1 つ別の形を探さないといけません(なぜ「2 つ」なのかは 線形微分方程式の重ね合わせ 参照)。
2 つ目の解は
一般に、特性方程式が を重根として持つときは、 と が独立な 2 解になります(係数が定数の 2 階線形微分方程式での標準的な事実)。 臨界減衰のケースでは なので 2 つ目は 。 実際に運動方程式を満たすことは演習 #3 で確認できます。
一般解はこれらの線形結合
振動はせず、最初の 部分で短時間だけ膨らんでから減衰する。 初期条件次第では「行き過ぎずに最も速く戻る」軌道で、ドアクローザーや計測器の指針のチューニングで好まれる挙動。
臨界減衰 () は特性方程式が重根 を持つ場合。
このとき しか得られないと、独立な解が 1 つしかなく、2 階微分方程式の一般解として足りない。
2 つ目の独立解として が取れることを、運動方程式に代入して確認しよう。
▶ 解答を見る 解答
を微分:
運動方程式 に代入( を共通因子として括る):
中身を整理:
臨界 では なので、結果はゼロ:
つまり も解。 と線形独立なので、これらの組み合わせで一般解が書ける:
注意:重根が出るのは「振動と非振動のちょうど境目」なので、係数を細かく調整したときに自然に出てくる挙動。
7. (c) 過減衰の解 (D > 0) 派生関係
判別式が正なら、根号の中も正で根号自身も実数。 特性方程式は異なる 2 つの実数根を持ち、両者とも負()です
指数関数の和が一般解
2 つの指数 (異なる崩壊率) が単に重なって減衰するだけで、振動は起きない。 長時間後は、ゆっくりな方の (これは負だが絶対値が小さい)が支配的に残る。