01抵抗で揺れ方が変わる

ばねや振り子に速さに比例する抵抗がかかると、揺れ方は抵抗の強さで変わります。抵抗の強さを変えてみてください。

減衰振動γ = 0.15 ω₀

  • 弱い:揺れながら小さくなる
  • ちょうど境目:揺れずに戻る
  • 強い:揺れずに、ゆっくり戻る

なぜ 3 通りに分かれるのか。運動方程式を解いて確かめます。

02運動方程式

まず、おもりの動きを式にします。質量 mm のおもりの、つり合いの位置からのずれを xx とすると、働く力はばねの力と抵抗の 2 つです。

壁につないだばねとおもり。ばねの力 −kx と抵抗 −bẋ が、どちらもずれや速さと反対向きに働く
ばねの力はずれと反対向き、抵抗は速さと反対向き

ニュートンの運動方程式 mx¨=−kx−bx˙m\ddot x = -kx - b\dot x を整理して、両辺を mm で割ると

m x¨+b x˙+k x=0m\,\ddot{x} + b\,\dot{x} + k\,x = 0
減衰振動の運動方程式
x¨+2γ x˙+ω02 x=0\ddot{x} + 2\gamma \,\dot{x} + \omega_{0}^{2}\,x = 0
2γ≡b/m2\gamma \equiv b/mω02≡k/m\omega_{0}^{2} \equiv k/m

γ\gamma は減衰定数(抵抗の強さを表す)、ω0\omega_0 は抵抗がないときの角振動数で、どちらも単位は s−1\mathrm{s}^{-1} です。m,k,bm, k, b はすべて正とします。

縦のばねでも、ずれをつり合いの位置から測れば重力は消えて同じ式です。振り子(糸の長さ ℓ\ell)は、振れが小さく(振り子の近似) sin⁡θ≈θ\sin\theta \approx \theta とみなせ、抵抗が角速度に比例するとき、x→θx \to \theta、ω02=g/ℓ\omega_0^2 = g/\ell で同じ式になります(γ\gamma はその抵抗の係数で決まる別の値)。

03なぜ 3 通りに分かれるか

この式は定数係数の 2 階線形微分方程式なので、x=eλtx = e^{\lambda t} を入れると特性方程式になります。その解を、x(t)x(t) と区別して根と呼びます(解き方の全体は 定数係数の 2 階線形微分方程式)。

λ2+2γ λ+ω02=0\lambda^{2} + 2\gamma \,\lambda + \omega_{0}^{2} = 0
λ=−γ±γ2−ω02\lambda = -\gamma \pm \sqrt{\gamma ^{2} - \omega_{0}^{2}}

λ\lambda の二次方程式なので、根号の中 γ2−ω02\gamma^2 - \omega_0^2 の符号で、根の種類が 3 通りに分かれます(二次方程式)。

  • γ<ω0\gamma < \omega_0:根が複素数 −γ±iωd-\gamma \pm i\omega_d。e±iωdt=cos⁡ωdt±isin⁡ωdte^{\pm i\omega_d t} = \cos\omega_d t \pm i\sin\omega_d t なので揺れる(Euler の公式)。
  • γ=ω0\gamma = \omega_0:根が重なる(重根)。揺れの境目。
  • γ>ω0\gamma > \omega_0:根が 2 つとも負の実数。指数関数で減るだけで揺れない。

これが 3 通りに分かれる理由です。以下、それぞれの解を書きます。

04抵抗が弱いとき (γ<ω0\gamma < \omega_0):減衰振動

根が複素数のとき、実数の解はどう書けるか。この揺れ方を減衰振動と呼びます。

λ=−γ±i ωd,ωd≡ω02−γ2\lambda = -\gamma \pm i\,\omega_{d},\qquad \omega_{d} \equiv \sqrt{\omega_{0}^{2} - \gamma ^{2}}λ=−γ±i ωd,ωd≡ω02−γ2\begin{gathered}\lambda = -\gamma \pm i\,\omega_{d},\\[4pt]\omega_{d} \equiv \sqrt{\omega_{0}^{2} - \gamma ^{2}}\end{gathered}
減衰振動の一般解
x(t)=e−γt(C1cos⁡ωdt+C2sin⁡ωdt)=A e−γtcos⁡(ωdt+ϕ)\begin{aligned} x(t) &= e^{-\gamma t}\bigl(C_{1}\cos\omega_{d}t + C_{2}\sin\omega_{d}t\bigr) \\ &= A\,e^{-\gamma t}\cos(\omega_{d}t + \phi) \end{aligned}
ωd≡ω02−γ2\omega_d \equiv \sqrt{\omega_0^2 - \gamma^2}

振幅は A e−γtA\,e^{-\gamma t} で小さくなり、周期 TdT_d(同じ向きに 0 を通る間隔)は抵抗がないときより長くなります(2 行目の形への書きかえは 三角関数の合成。C1,C2C_1, C_2 は実数で、最初の位置と速さで決まる。演習 1)。

Td=2πωd>2πω0T_{d} = \frac{2\pi}{\omega_{d}} > \frac{2\pi}{\omega_{0}}
減衰振動の x(t) と、それを挟む ±A e^{−γt} の線
x(t)(紺)は、破線 ±A e−γt の間で揺れながら小さくなる

例題 1m=0.200 kg, k=12.3 N/m, b=0.100 kg/sm = 0.200\ \mathrm{kg},\ k = 12.3\ \mathrm{N/m},\ b = 0.100\ \mathrm{kg/s} のおもりは、どう揺れるか。

γ=b2m=0.250 s−1,ω0=km=7.84 s−1\gamma = \frac{b}{2m} = 0.250\ \mathrm{s^{-1}},\qquad \omega_0 = \sqrt{\frac{k}{m}} = 7.84\ \mathrm{s^{-1}}γ=b2m=0.250 s−1,ω0=km=7.84 s−1\begin{gathered}\gamma = \frac{b}{2m} = 0.250\ \mathrm{s^{-1}},\\[4pt]\omega_0 = \sqrt{\frac{k}{m}} = 7.84\ \mathrm{s^{-1}}\end{gathered}

γ<ω0\gamma < \omega_0 なので減衰振動です。

ωd=ω02−γ2=7.84 s−1,Td=2πωd=0.802 s\omega_d = \sqrt{\omega_0^2 - \gamma^2} = 7.84\ \mathrm{s^{-1}},\qquad T_d = \frac{2\pi}{\omega_d} = 0.802\ \mathrm{s}ωd=ω02−γ2=7.84 s−1,Td=2πωd=0.802 s\begin{gathered}\omega_d = \sqrt{\omega_0^2 - \gamma^2} = 7.84\ \mathrm{s^{-1}},\\[4pt]T_d = \frac{2\pi}{\omega_d} = 0.802\ \mathrm{s}\end{gathered}

振幅は 1 周期ごとに e−γTd=0.82e^{-\gamma T_d} = 0.82 倍になります。γ\gamma が ω0\omega_0 よりずっと小さいので、周期は抵抗がないときとほとんど同じです。

山の高さの比から γ\gamma を測る方法は 対数減衰率と Q 値。

演習 1

抵抗が弱いとき (γ<ω0\gamma < \omega_0) の一般解

x(t)=e−γt(C1cos⁡ωdt+C2sin⁡ωdt)x(t) = e^{-\gamma t}\bigl(C_{1}\cos\omega_{d}t + C_{2}\sin\omega_{d}t\bigr)

で、最初の位置 x(0)=x0x(0) = x_0 と速さ x˙(0)=v0\dot x(0) = v_0 から C1,C2C_1, C_2 を決めよう。

答えを見る

t=0t = 0 を入れると x(0)=C1x(0) = C_1 なので C1=x0C_1 = x_0。

微分すると(積の微分)

x˙(t)=e−γt[(−γC1+ωdC2)cos⁡ωdt+(−γC2−ωdC1)sin⁡ωdt]\begin{aligned} \dot x(t) = e^{-\gamma t}\Bigl[&(-\gamma C_1 + \omega_d C_2)\cos\omega_d t \\ &+ (-\gamma C_2 - \omega_d C_1)\sin\omega_d t\Bigr] \end{aligned}

t=0t = 0 では x˙(0)=−γC1+ωdC2\dot x(0) = -\gamma C_1 + \omega_d C_2。これが v0v_0 なので

C1=x0,C2=v0+γ x0ωd.C_1 = x_0,\qquad C_2 = \frac{v_0 + \gamma \,x_0}{\omega_d}.C1=x0,C2=v0+γ x0ωd.\begin{gathered}C_1 = x_0,\\[4pt]C_2 = \frac{v_0 + \gamma \,x_0}{\omega_d}.\end{gathered}

たとえば x0=1, v0=0x_0 = 1,\ v_0 = 0(正の向きに 1 だけずらして、そっと離す)なら C2=γ/ωdC_2 = \gamma /\omega_d です。

05ちょうど境目のとき (γ=ω0\gamma = \omega_0):臨界減衰

根が重なると、指数関数の解は 1 つしか出ません。2 つ目の解は t e−γtt\,e^{-\gamma t} で(重根のときの解)

臨界減衰の一般解
x(t)=(C1+C2 t) e−γtx(t) = (C_{1} + C_{2}\,t)\,e^{-\gamma t}

揺れません。C1+C2t=0C_1 + C_2 t = 0 となる tt は多くても 1 つなので、つり合いの位置を通り越すのは最初の勢いしだいで多くても 1 回です(演習 2)。

演習 2

臨界減衰 (γ=ω0\gamma = \omega_0) で、x(0)=1x(0) = 1、x˙(0)=−3γ\dot x(0) = -3\gamma (つり合いの位置に向かって勢いよく押し出す)とする。
おもりがつり合いの位置を通り越す時刻を求めよう。

答えを見る

x=(C1+C2t)e−γtx = (C_1 + C_2 t)e^{-\gamma t} で x(0)=C1=1x(0) = C_1 = 1。

x˙(t)=(C2−γC1−γC2t) e−γt\dot x(t) = (C_2 - \gamma C_1 - \gamma C_2 t)\,e^{-\gamma t}

より x˙(0)=C2−γ=−3γ\dot x(0) = C_2 - \gamma = -3\gamma 、つまり C2=−2γC_2 = -2\gamma 。

x(t)=(1−2γt) e−γtx(t) = (1 - 2\gamma t)\,e^{-\gamma t}

x=0x = 0 になるのは 1−2γt=01 - 2\gamma t = 0 のときだけなので、通り越すのは t=1/(2γ)t = 1/(2\gamma ) の 1 回です。その後は負の側から 0 に近づき、もう 0 を横切りません。

06抵抗が強いとき (γ>ω0\gamma > \omega_0):過減衰

根が異なる 2 つの実数なら、解は 2 つの指数関数の和です。

λ±=−γ±γ2−ω02\lambda_{\pm} = -\gamma \pm \sqrt{\gamma ^{2} - \omega_{0}^{2}}
過減衰の一般解
x(t)=C1 eλ+t+C2 eλ−tx(t) = C_{1}\,e^{\lambda_{+}t} + C_{2}\,e^{\lambda_{-}t}
λ±=−γ±γ2−ω02\lambda_\pm = -\gamma \pm \sqrt{\gamma^2 - \omega_0^2}

γ2−ω02<γ\sqrt{\gamma^2 - \omega_0^2} < \gamma なので根は 2 つとも負で、揺れずに減ります。x=0x = 0 は e(λ+−λ−)t=−C2/C1e^{(\lambda_+ - \lambda_-)t} = -C_2/C_1(C1≠0C_1 \neq 0)で、左辺は増える一方なので、通り越すのはやはり多くても 1 回です。

07どれがいちばん速く止まるか

ドアクローザーや計器の針のように、早く止めたいときに知りたいことです。x(0)=1, x˙(0)=0x(0) = 1,\ \dot x(0) = 0、ω0=1\omega_0 = 1 の 3 つの動きを並べると

減衰振動・臨界減衰・過減衰の x(t) を並べた図
紺の実線 = 減衰振動 (γ = 0.15)、灰色の破線 = 臨界減衰 (γ = 1.0)、薄い青 = 過減衰 (γ = 2.0)

答えは比べ方で変わります。ω0\omega_0 を固定して γ\gamma だけを変えます。

長い時間がたったあとの減り方

ずれは最後には e−rte^{-rt} のように減ります。解の形から

r(γ)={γ(γ<ω0)ω0(γ=ω0)γ−γ2−ω02(γ>ω0)r(\gamma ) = \begin{cases} \gamma & (\gamma < \omega_0) \\ \omega_0 & (\gamma = \omega_0) \\ \gamma - \sqrt{\gamma ^2 - \omega_0^2} & (\gamma > \omega_0) \end{cases}

過減衰の rr は

γ−γ2−ω02=ω02γ+γ2−ω02<ω02ω0=ω0\gamma - \sqrt{\gamma ^2 - \omega_0^2} = \frac{\omega_0^2}{\gamma + \sqrt{\gamma ^2 - \omega_0^2}} < \frac{\omega_0^2}{\omega_0} = \omega_0

なので、rr がいちばん大きいのは臨界減衰です。

減衰振動の rr は振幅の減り方。臨界減衰は tt の因子があるので、ω0\omega_0 より小さいどんな rr の e−rte^{-rt} よりも速く減る、という意味で r=ω0r = \omega_0。過減衰で C1=0C_1 = 0 となる特別な初期値では、速いほうの λ−\lambda_- だけで減り、臨界減衰より速くなります。

決めた幅に収まるまでの時間

ずれが最初のずれの 5%(0.05)以内に収まって、もう出なくなるまでの時間で比べると、臨界減衰は約 4.7/ω04.7/\omega_0、γ≈0.7 ω0\gamma \approx 0.7\,\omega_0 では約 2.9/ω02.9/\omega_0 で、こちらがいちばん短くなります(数値計算)。少し行き過ぎても、そのぶん速く近づくためです。