012 つの疑問

  • 解を何倍かして足したものも、本当に解なのか。
  • なぜ 2 つの解で、全部の解が書けるのか。

どちらも、方程式が線形であることから出てきます。

02線形とは

足して解になるかは、方程式の形で決まります。2 階の微分方程式 L[x]=0L[x] = 0 の左辺が

L[x]≡x¨+p(t) x˙+q(t) xL[x] \equiv \ddot x + p(t)\,\dot x + q(t)\,x

の形(xx とその微分について 1 次。係数 p,qp, q は tt の関数でもよい)なら、微分が和と定数倍を保つので

線形性
L[c1x1+c2x2]=c1 L[x1]+c2 L[x2]L[c_1 x_1 + c_2 x_2] = c_1\,L[x_1] + c_2\,L[x_2]
L[x]≡x¨+p(t) x˙+q(t) xL[x] \equiv \ddot x + p(t)\,\dot x + q(t)\,x

が成り立ちます。これが線形です。x¨+x3=0\ddot x + x^3 = 0 のように x3x^3 などがあると成り立ちません(演習 3)。

03足しても解になる

1 つ目の疑問の答えです。L[x1]=L[x2]=0L[x_1] = L[x_2] = 0 なら、線形性から

重ね合わせの原理
L[c1x1+c2x2]=c1⋅0+c2⋅0=0L[c_1 x_1 + c_2 x_2] = c_1 \cdot 0 + c_2 \cdot 0 = 0

これを重ね合わせの原理と呼びます。c1,c2c_1, c_2 や解が複素数でも同じです。

ẍ + x = 0 の解 cos t と sin t、その組み合わせ 3cos t + 4sin t のグラフ
ẍ + x = 0 の解 cos t、sin t を組み合わせた 3 cos t + 4 sin t も解

右辺が 0 のときだけです。外から力 f(t)f(t) がかかって L[x]=fL[x] = f なら、L[x1+x2]=2fL[x_1 + x_2] = 2f になり、和は解ではありません。

演習 1

L[x1]=0L[x_1] = 0、L[x2]=0L[x_2] = 0 のとき、L[c1x1+c2x2]=0L[c_1 x_1 + c_2 x_2] = 0 を、微分の性質だけから示そう。

答えを見る

微分は和と定数倍を保つので

(c1x1+c2x2)′′=c1x¨1+c2x¨2,(c1x1+c2x2)′=c1x˙1+c2x˙2.(c_1 x_1 + c_2 x_2)'' = c_1\ddot x_1 + c_2\ddot x_2,\qquad (c_1 x_1 + c_2 x_2)' = c_1\dot x_1 + c_2\dot x_2.(c1x1+c2x2)′′=c1x¨1+c2x¨2,(c1x1+c2x2)′=c1x˙1+c2x˙2.\begin{gathered}(c_1 x_1 + c_2 x_2)'' = c_1\ddot x_1 + c_2\ddot x_2,\\[4pt](c_1 x_1 + c_2 x_2)' = c_1\dot x_1 + c_2\dot x_2.\end{gathered}

これを LL に入れて c1c_1 と c2c_2 でまとめると

L[c1x1+c2x2]=c1(x¨1+px˙1+qx1)+c2(x¨2+px˙2+qx2)=c1L[x1]+c2L[x2]=0.\begin{aligned} L[c_1 x_1 + c_2 x_2] &= c_1\bigl(\ddot x_1 + p\dot x_1 + q x_1\bigr) \\ &\quad + c_2\bigl(\ddot x_2 + p\dot x_2 + q x_2\bigr) \\ &= c_1 L[x_1] + c_2 L[x_2] = 0. \end{aligned}

042 つで全部の解になる

2 つ目の疑問です。ここでは次の定理を使います(証明は微分方程式の教科書にある基本定理)。

存在と一意性の定理:p,qp, q が t=0t = 0 を含む区間 II で連続なら、どんな x0,v0x_0, v_0 に対しても、x(0)=x0, x˙(0)=v0x(0) = x_0,\ \dot x(0) = v_0 を満たす II 上の解がちょうど 1 つある。

この定理で、次の初期値をもつ 2 つの解 x1,x2x_1, x_2 をとります。

x1(0)=1, x˙1(0)=0,x2(0)=0, x˙2(0)=1x_1(0) = 1,\ \dot x_1(0) = 0,\qquad x_2(0) = 0,\ \dot x_2(0) = 1x1(0)=1, x˙1(0)=0,x2(0)=0, x˙2(0)=1\begin{gathered}x_1(0) = 1,\ \dot x_1(0) = 0,\\[4pt]x_2(0) = 0,\ \dot x_2(0) = 1\end{gathered}

ほかの解 xx を 1 つとり、x(0)=x0, x˙(0)=v0x(0) = x_0,\ \dot x(0) = v_0 とします。y=x0x1+v0x2y = x_0 x_1 + v_0 x_2 は 03 節から解で、

y=x0 x1+v0 x2⟹y(0)=x0,  y˙(0)=v0y = x_0\,x_1 + v_0\,x_2 \quad\Longrightarrow\quad y(0) = x_0,\ \ \dot y(0) = v_0

xx と yy は同じ初期値をもつ解なので、一意性から x=yx = y。どの解も x1,x2x_1, x_2 の組み合わせで書けます。初期値の平面で見ると、2 つの解の初期値 (1, 0) と (0, 1) を組み合わせて、どの初期値も作れるということです。

初期値の平面で、x1 の初期値 (1, 0) と x2 の初期値 (0, 1) の矢印を組み合わせて、任意の点 (x0, v0) を作る図
2 つの解の初期値を組み合わせて、どの初期値も作れる

解が 1 つだけだと、c x1c\,x_1 の初期値 (c x1(0), c x˙1(0))(c\,x_1(0),\ c\,\dot x_1(0)) は平面の 1 本の直線の上にしか来ないので、すべての初期値は作れません。

nn 階なら初期値が nn 個あるので、同じ理由で nn 個の解が要ります。

例題 1x¨+x=0, x(0)=2, x˙(0)=−1\ddot x + x = 0,\ x(0) = 2,\ \dot x(0) = -1 の解

cos⁡t\cos t は初期値 (1,0)(1, 0)、sin⁡t\sin t は (0,1)(0, 1) の解なので、x1=cos⁡t, x2=sin⁡tx_1 = \cos t,\ x_2 = \sin t として

x=2cos⁡t−sin⁡tx = 2\cos t - \sin t

演習 2

単振動 x¨+ω2x=0\ddot x + \omega^2 x = 0(ω≠0\omega \neq 0)の解で、x(0)=x0, x˙(0)=v0x(0) = x_0,\ \dot x(0) = v_0 を満たすものを、cos⁡ωt\cos\omega t と sin⁡ωt\sin\omega t の組み合わせで書こう。

答えを見る

x=acos⁡ωt+bsin⁡ωtx = a\cos\omega t + b\sin\omega t とおく。x(0)=a=x0x(0) = a = x_0。x˙=−aωsin⁡ωt+bωcos⁡ωt\dot x = -a\omega\sin\omega t + b\omega\cos\omega t より x˙(0)=bω=v0\dot x(0) = b\omega = v_0。

x(t)=x0cos⁡ωt+v0ωsin⁡ωtx(t) = x_0\cos\omega t + \frac{v_0}{\omega}\sin\omega t

05ほかの 2 つの解を使うとき

ふつうは、04 節のような都合のよい初期値の解ではなく、eλte^{\lambda t} などで見つけた 2 つの解を使います。それで全部の初期値が作れるかは、c1x1+c2x2c_1 x_1 + c_2 x_2 に初期値を合わせる連立方程式

(x1(0)x2(0)x˙1(0)x˙2(0))(c1c2)=(x0v0)\begin{pmatrix} x_1(0) & x_2(0) \\ \dot x_1(0) & \dot x_2(0) \end{pmatrix}\begin{pmatrix} c_1 \\ c_2 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} x_0 \\ v_0 \end{pmatrix}

がいつも解けるかで決まります。解ける条件は、この行列の行列式が 0 でないことです(行列式)。この行列式を各時刻で考えたものが Wronskian です。

W(t)=det⁡(x1x2x˙1x˙2)=x1 x˙2−x2 x˙1W(t) = \det\begin{pmatrix} x_1 & x_2 \\ \dot x_1 & \dot x_2 \end{pmatrix} = x_1\,\dot x_2 - x_2\,\dot x_1

同じ方程式の解どうしなら W(t)=W(0) exp⁡(−∫0tp(s) ds)W(t) = W(0)\,\exp\Bigl(-\int_0^t p(s)\,ds\Bigr) なので、WW は区間 II の上でずっと 0 か、一度も 0 にならないかのどちらかです。W≠0W \neq 0 なら 2 つの解は線形独立で、このような 2 つの解を基本解と呼びます。どこか 1 つの時刻で W≠0W \neq 0 を確かめれば十分です。

W(cos⁡ωt, sin⁡ωt)=ω,W(eαt, eβt)=(β−α) e(α+β)tW(\cos\omega t,\ \sin\omega t) = \omega,\qquad W(e^{\alpha t},\ e^{\beta t}) = (\beta - \alpha)\,e^{(\alpha + \beta)t}W(cos⁡ωt, sin⁡ωt)=ω,W(eαt, eβt)=(β−α) e(α+β)t\begin{gathered}W(\cos\omega t,\ \sin\omega t) = \omega,\\[4pt]W(e^{\alpha t},\ e^{\beta t}) = (\beta - \alpha)\,e^{(\alpha + \beta)t}\end{gathered}

たとえば cos⁡ωt,sin⁡ωt\cos\omega t, \sin\omega t は ω≠0\omega \neq 0、eαt,eβte^{\alpha t}, e^{\beta t} は α≠β\alpha \neq \beta なら使えます(定数係数の 2 階線形微分方程式)。

演習 3

x¨+x3=0\ddot x + x^3 = 0 の解 x1,x2x_1, x_2 について、x1+x2x_1 + x_2 が解にならない理由を、左辺を計算して示そう。

答えを見る

y=x1+x2y = x_1 + x_2 を入れると

y¨+y3=(x¨1+x13)+(x¨2+x23)+3x12x2+3x1x22.\begin{aligned} \ddot y + y^3 &= (\ddot x_1 + x_1^3) + (\ddot x_2 + x_2^3) \\ &\quad + 3x_1^2x_2 + 3x_1x_2^2. \end{aligned}

最初の 2 つのかっこは 0 だが、3x1x2(x1+x2)3x_1x_2(x_1 + x_2) が残る。これは一般に 0 ではないので、x1+x2x_1 + x_2 は解ではない。