01なぜ行列式か
次の連立方程式は、いつでも 1 組の答えをもつでしょうか。
{ax+by=ecx+dy=f 文字を消すと
(ad−bc)x=de−bf,(ad−bc)y=af−ce(ad−bc)x=de−bf,(ad−bc)y=af−ce ad−bc=0 なら割って答えがただ 1 つに決まり(代入すると確かに元の式を満たす)、ad−bc=0 なら決まりません(答えがないか、無数にある)。この ad−bc を係数の行列の行列式と呼びます。
2 次の行列式det(acbd)=ad−bc 例題 12x+y=5, x+3y=5 を解く。
ad−bc=2⋅3−1⋅1=5,x=53⋅5−1⋅5=2,y=52⋅5−1⋅5=1ad−bc=2⋅3−1⋅1=5,x=53⋅5−1⋅5=2,y=52⋅5−1⋅5=1 線形微分方程式の重ね合わせでは、2 つの解で初期値を合わせられるかを決めるのに使います(Wronskian)。
022×2 の意味
なぜ ad−bc=0 だと答えが決まらないのか、図で見ます。ad−bc は、列ベクトル (a,c) と (b,d) が張る平行四辺形の符号付きの面積です(絶対値が面積。(a,c) から (b,d) へ反時計回りなら正)。2 本が平行だと面積は 0 です。2×2 では、列が平行なことと行 (a,b),(c,d) が平行なことは、どちらも ad−bc=0 と同じです。行が平行なら 01 節の 2 本の式は同じ傾きの直線で、交点が 1 つに決まりません。
行列式は列ベクトルが張る平行四辺形の面積。平行なら 0 演習 1
次の行列式を計算しよう。
det(52−34)
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公式 det=ad−bc に代入
det(52−34)=5⋅4−(−3)⋅2=20+6=26.
注意:右上 b が負のとき −bc でさらに符号がひっくり返るので、足し算になる。
033×3 (Sarrus の方法)
3 元の連立方程式でも同じように、解けるかを決める数があります。3×3 の行列式は 6 つの積の和と差です。
deta11a21a31a12a22a32a13a23a33 =a11a22a33+a12a23a31+a13a21a32−a13a22a31−a11a23a32−a12a21a33
右に 2 列書き写し、右下がりの斜めの積を足して、右上がりの斜めの積を引く Sarrus の方法は 3×3 だけです。4×4 以上では同じ形になりません。
演習 2
次の行列式を、Sarrus の方法で計算しよう。
det101240356
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右下がりの 3 本(プラス):
- 1⋅4⋅6=24
- 2⋅5⋅1=10
- 3⋅0⋅0=0
- 合計: 24+10+0=34
右上がりの 3 本(マイナス):
- 3⋅4⋅1=12
- 1⋅5⋅0=0
- 2⋅0⋅6=0
- 合計: 12+0+0=12
差をとる:
det=34−12=22.
04一般の n×n (余因子展開)
4×4 以上はどうするか。行列式を 1 つ小さい行列式の和に分けて、2×2 まで下ろします。n×n 行列 A=(aij) から i 行と j 列を消した行列の行列式を Mij(小行列式)とすると、1 行目で展開して
a11a21a31a12a22a32a13a23a33→M12=det(a21a31a23a33) detA=j=1∑n(−1)1+ja1jM1j=a11M11−a12M12+a13M13−⋯ Cij=(−1)i+jMij を余因子と呼びます。i 行目で展開するときは detA=∑jaijCij で、符号 (−1)i+j は市松模様(1 行目は +,−,+,…、2 行目は −,+,−,…)です。どの行・列で展開しても同じ値になる(証明は線形代数の教科書)ので、0 の多い行・列を選ぶと楽です。
演習 3
上と同じ行列を、今度は1 行目で余因子展開して計算しよう。
det101240356=a11M11−a12M12+a13M13
ここで Mij は i 行・j 列を消した小行列の行列式(小行列式)。
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1 行目の各成分について、その行と列を消した 2×2 行列式を取る。
M11(1 行 1 列を消す)
M11=det(4056)=4⋅6−5⋅0=24.
M12(1 行 2 列を消す)
M12=det(0156)=0⋅6−5⋅1=−5.
M13(1 行 3 列を消す)
M13=det(0140)=0⋅0−4⋅1=−4.
展開:
det=1⋅24−2⋅(−5)+3⋅(−4)=24+10−12=22.
Sarrus と同じ値が出る。
余因子展開はどんな行・列でも展開できるので、0 が多い行を選ぶと楽になる(掛け算が消える)。
05計算を楽にする性質
大きい行列は展開がたいへんです。次の性質(証明は線形代数の教科書)で 0 を増やしてから展開します。
- ある行に、ほかの行の定数倍を足しても値は変わらない
- 2 つの行を入れかえると符号が変わる。ある行を k 倍すると値も k 倍
- 同じ行が 2 つある、またはある行がすべて 0 なら、値は 0
- 転置しても同じ detA=detAT。積は積 det(AB)=detAdetB
1 つ目の性質と、必要なら行の入れかえ(符号が変わる)で上三角行列(対角より下がすべて 0)にすれば、行列式は対角成分の積です。