1. 外積って何?
ベクトル a と b の
外積 (cross product) a×b は、
結果がベクトルになる演算です。
内積 (ドット積) がスカラーになるのと対照的。
外積は 2 つの情報で決まります:
- 大きさ: a と b が作る平行四辺形の面積
- 向き: 2 つのベクトルが張る平面に垂直で、右ねじの法則で決まる側
2. 大きさ: 平行四辺形の面積
外積の大きさは、a と b の間の角度を θ として:
∣a×b∣=∣a∣∣b∣sinθ
これは平行四辺形の面積と一致します。底辺 ∣a∣、
高さ ∣b∣sinθ の面積。
|a × b| は a, b が張る平行四辺形の面積
向きが平行 (θ=0 または π) のときは
sinθ=0 なので a×b=0。
つまり 平行なベクトル同士の外積はゼロ。
3. 向き: 右ねじの法則
外積の向きは、a と b が張る平面に
垂直な 2 方向のうち、右ねじの法則で選ばれます。
- 平面に右ねじ (普通のねじ) を立てる
- a から b へ回す (角度が小さい側を通る向きに)
- そのときねじが進む向きが a×b の向き
回す順序を入れ替える (b から a) と、ねじは逆に進むので符号が反転 (a×b=−b×a)。
「ねじは右回しで進む」という日常の感覚そのまま。
演習 #1
次の 2 ベクトルの外積を計算しよう。
a=(1,2,3)、b=(4,5,6)
▶ 解答を見る 解答
成分公式に当てはめる:
- x 成分: a2b3−a3b2=2⋅6−3⋅5=−3
- y 成分: a3b1−a1b3=3⋅4−1⋅6=6
- z 成分: a1b2−a2b1=1⋅5−2⋅4=−3
a×b=(−3, 6, −3)
検算: a⋅(a×b)=1(−3)+2(6)+3(−3)=0 ✓
(外積は a と直交する)。
5. 基本ベクトル i, j, k の関係
直交座標の基本ベクトル i=(1,0,0), j=(0,1,0), k=(0,0,1) に成分公式を当てはめると:
i×j=k,j×k=i,k×i=j i → j → k → i の巡回で外積が閉じる (cyclic)。
逆方向は符号反転: j×i=−k など。
6. 性質
- 反対称 (入れ替えで符号反転):
a×b=−b×a
- 分配:
a×(b+c)=a×b+a×c
- スカラー倍:
(ka)×b=k(a×b)
- 平行なら 0:
a×a=0 (自分自身との外積は必ず 0)
- 結合則は成り立たない: 一般に
a×(b×c)=(a×b)×c
7. 物理での出番
外積は「回転」「ねじれ」に関係する物理量でよく出てきます。
力のモーメント (トルク)
τ=r×F r は回転軸から力の作用点までの位置ベクトル、
F は加えた力。ねじる強さが外積で表される。
ローレンツ力
F=qv×B
磁場 B 中を速度 v で動く荷電粒子が受ける力。
速度と磁場の両方に垂直。
角運動量
L=r×p p は運動量。回転運動の保存量の中心になる量。
演習 #2
てこの先端 r=(2,0,0) に力 F=(0,3,0) をかけたときのモーメント τ=r×F を求めよう。
▶ 解答を見る 解答
成分公式:
- x 成分: r2F3−r3F2=0⋅0−0⋅3=0
- y 成分: r3F1−r1F3=0⋅0−2⋅0=0
- z 成分: r1F2−r2F1=2⋅3−0⋅0=6
τ=(0, 0, 6)
物理的には: x 軸方向の棒に y 軸方向の力がかかっているので、回転軸は z 軸に沿って、大きさ 6 の回転モーメントが生じる。右ねじの法則で「反時計回り (上から見て)」。