01隣り合う山の比
まず、山の高さの比が何で決まるかを調べます。抵抗が弱いとき(γ<ω0)の動きは(減衰振動の定式化)
x(t)=Ae−γtcos(ωdt+ϕ),ωd=ω02−γ2x(t)=Ae−γtcos(ωdt+ϕ),ωd=ω02−γ2
周期 Td=2π/ωd だけ時間を進めると、cos の中は 2π 増えて元に戻り、e−γt の分だけが残ります。
x(t+Td)=Ae−γ(t+Td)cos(ωdt+2π+ϕ)=e−γTdx(t)
どの時刻でも、Td 後の値はちょうど e−γTd 倍です。x˙ も同じ形なので、x˙=0 になる山(x の極大)も Td ごとに来ます。n 番目の山の高さを xn とすると、近似なしで
xnxn+1=e−γTd 山の高さの比を測れば、γTd が分かります。
山の高さ x0, x1, x2, … は 1 周期 Td ごとに同じ比で小さくなる(γ = 0.1, ω0 = 1)。破線は包絡線 A e−γt
山の点は、破線に接する点より少し手前です。それでも間隔は Td で、比は上の式どおりです。
02対数減衰率
比 e−γTd のままだと、何周期分かをまとめて扱いにくい。対数をとると掛け算が足し算になり、γTd がそのまま出ます。これが対数減衰率です。
対数減衰率δ≡lnxn+1xn=γTd=ωd2πγTd=2π/ωd
山は 1 周期ごとに e−δ 倍になるので、N 周期離れた山を使っても求められます。
δ=N1lnxNx0
離れた山を使うと、測定の誤差が効きにくくなります。たくさんの山があれば、n に対する lnxn に直線を合わせ、傾きから −δ を読みます(減衰振動のデータ解析)。xn はつり合いの位置から測った高さです。
03近似はどこまで正しいか
教科書や実験の手引きでは、ωd を ω0 で置きかえた式がよく使われます。
δ=ω02−γ22πγ≈ω02πγ(γ≪ω0)δ=ω02−γ22πγ≈ω02πγ(γ≪ω0)
近似式の値は正しい値の 1−(γ/ω0)2 倍で、少し小さくなります。正しい値に対して何 % 小さいかを計算すると
| γ/ω0 | δ(およそ) | 正しい値との差 |
| 0.01 | 0.063 | 0.005% |
| 0.05 | 0.31 | 0.13% |
| 0.1 | 0.63 | 0.50% |
| 0.3 | 2.0 | 4.6% |
ずれはおよそ 21(γ/ω0)2 で、γ/ω0 が 0.1 くらいまでなら、ふつうの測定の誤差よりずっと小さく収まります。
04Q 値
δ は抵抗が弱いと小さな数になり、読みにくい。逆数に近い Q 値のほうが読みやすい数です(Q≈π/δ なので、振幅は約 Q/π 周期で 1/e になる)。抵抗が弱いほど大きくなります。
Q 値Q≡2γω0
対数減衰率とは、近似なしで次の関係があります。
δπ=2γω02−γ2=Q1−4Q21≈Q Q が大きい(抵抗が弱い)ほど Q≈π/δ はよく合います。振幅が半分になるまでの周期の数は
N1/2=δln2≈πQln2 例題 1ある山の高さが 10.0、次の山が 9.0 だった。δ、Q、振幅が半分になるまでの周期の数は。
δ=ln9.010.0=0.1054,Q≈0.1054π=29.8,N1/2=0.1054ln2=6.6δ=ln9.010.0=0.1054,Q≈0.1054π=29.8,N1/2=0.1054ln2=6.6 約 6.6 周期で振幅が半分になります。
Q 値には、ここで使った ω0/2γ のほかに、エネルギーや共鳴の幅から決める定義もあります。抵抗が弱いときはどれもほぼ同じ値になりますが、強いときは一致しません。
演習 1
減衰振動を測ったら、ある山の高さが 10.0、次の山が 8.0 だった。対数減衰率 δ と、Q 値のおよその値を求めよう。
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δ=ln8.010.0=ln1.25≈0.223
δ が小さいので Q≈π/δ が使えて
Q≈0.223π≈14.
厳密な式 π/δ=Q1−1/(4Q2) との差は、Q=14 なら 0.1% より小さい。
演習 2
Q=50 の振り子は、何周期で振幅が半分になるか。
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δ≈π/Q=π/50≈0.0628。山の高さは 1 周期ごとに e−δ 倍なので、N 周期で e−Nδ 倍。これが 1/2 になるのは
N=δln2≈0.06280.693≈11
で、約 11 周期です。
05エネルギーで見る Q 値
Q 値が何を表すかを、エネルギーで見ます。ばねのエネルギーと運動エネルギーの和 E は、抵抗があると減っていきます(演習 3)。ここでは元の係数 m,b,k で書きます(2γ=b/m, ω02=k/m)。
E=21mx˙2+21kx2,dtdE=x˙(mx¨+kx)=−bx˙2≤0E=21mx˙2+21kx2,dtdE=x˙(mx¨+kx)=−bx˙2≤0
1 周期たつと x も x˙ もちょうど e−γTd 倍になるので、E はちょうど e−2γTd 倍になります。1 周期で失う割合は 1−e−2γTd で、抵抗が弱いと ≈2γTd≈4πγ/ω0 なので
Q≈2π×1 周期で失うエネルギー1 周期のはじめの E
E は 1 周期ごとにちょうど e−2δ 倍。周期の中では、速く動くときほど速く減る
Q 値が 100 なら、1 周期で失うエネルギーはたくわえている分の約 2π/100≈6% です。この式の右辺は、抵抗が弱いときだけ ω0/2γ と一致します(正しくは 2π/(1−e−2δ))。ずれはおよそ δ≈π/Q の割合で、Q=100 でも 3% ほど、Q=14 では 2 割強大きく出ます。このノートでは 04 節の式を Q 値の定義とします。
演習 3
エネルギーの式 dE/dt=−bx˙2 を、運動方程式 mx¨+bx˙+kx=0 から導こう。
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E=21mx˙2+21kx2 を t で微分する(合成関数の微分)。
dtdE=mx˙x¨+kxx˙=x˙(mx¨+kx).
運動方程式より mx¨+kx=−bx˙ なので
dtdE=−bx˙2.
b>0 なので、エネルギーは増えることがなく、動いている間(x˙=0)は減り続ける。