012 変数の谷の底

1 変数なら、f′(x)=0f'(x) = 0 の点が極小・極大の候補でした。2 変数の f(x,y)f(x, y) でも、xx と yy を別々に 1 変数として見ればよさそうです。ところが、xx 方向に切ると谷の底でも、yy 方向に切ると山の頂上になっている点があります(03 節の鞍点)。逆に、xx 方向にも yy 方向にも谷なのに、斜めに切ると山になる点もあります(たとえば x2−3xy+y2x^2 - 3xy + y^2 の原点。04 節で D=4−9<0D = 4 - 9 < 0)。2 つの向きを合わせて調べる必要があります。

02停留点

yy を止めて xx だけで微分したものが偏微分 ∂f/∂x\partial f/\partial x(fxf_x とも書く)です。谷の底では、xx 方向にも yy 方向にも傾きがないので

停留点の条件
∂f∂x=0,∂f∂y=0\frac{\partial f}{\partial x} = 0,\qquad \frac{\partial f}{\partial y} = 0∂f∂x=0,∂f∂y=0\begin{gathered}\frac{\partial f}{\partial x} = 0,\\[4pt]\frac{\partial f}{\partial y} = 0\end{gathered}

この 2 つを満たす点を停留点と呼びます。ff がなめらかなら、定義域の内側にある極小や極大は必ず停留点です(端では成り立たない)。ただし、逆は成り立ちません。

03谷・山・峠

停留点には、谷の底(極小)、山の頂上(極大)のほかに、鞍点(峠)があります。ある向きには上り、別の向きには下る点です。

3 つの等高線図。極小 x²+y² は中心が低い、極大 −(x²+y²) は中心が高い、鞍点 x²−y² は左右に上り上下に下る
どれも原点で偏微分が 0。偏微分だけでは区別できない

偏微分が 0 なだけでは、どれか分かりません。もう 1 回微分して、曲がり方を見ます。

042 階の偏微分で見分ける

1 変数の f′′f'' の符号に当たるものがほしい。停留点で 2 階の偏微分 fxx=∂2f/∂x2f_{xx} = \partial^2 f/\partial x^2、fyy=∂2f/∂y2f_{yy} = \partial^2 f/\partial y^2、fxy=∂2f/∂x∂yf_{xy} = \partial^2 f/\partial x\partial y を求め(ff は 2 回なめらかに微分できるとする)

D=fxx fyy−fxy 2D = f_{xx}\,f_{yy} - f_{xy}^{\,2}
fxx=∂2f/∂x2f_{xx} = \partial^2 f/\partial x^2fyy=∂2f/∂y2f_{yy} = \partial^2 f/\partial y^2fxy=∂2f/∂x ∂yf_{xy} = \partial^2 f/\partial x\,\partial y
  • D>0, fxx>0D > 0,\ f_{xx} > 0:極小(どの向きにも上る)
  • D>0, fxx<0D > 0,\ f_{xx} < 0:極大
  • D<0D < 0:鞍点
  • D=0D = 0:これだけでは分からない

理由:停留点からのずれを (u,v)(u, v) とし、ff を 2 次までテイラー展開すると、1 次の項は 0 で、D≠0D \neq 0 なら増え方は 2 次式 12(fxxu2+2fxyuv+fyyv2)\frac{1}{2}(f_{xx}u^2 + 2f_{xy}uv + f_{yy}v^2) で決まります。平方完成すると 12[fxx(u+fxyfxxv)2+Dfxxv2]\frac{1}{2}\bigl[f_{xx}(u + \tfrac{f_{xy}}{f_{xx}}v)^2 + \tfrac{D}{f_{xx}}v^2\bigr] なので、D>0D > 0 なら 2 つの項は fxxf_{xx} と同じ符号、D<0D < 0 なら向きによって符号が変わります(fxx=0f_{xx} = 0 のときは fyyf_{yy} で同じように平方完成し、両方 0 なら fxyuvf_{xy}uv の項だけで、やはり向きで符号が変わる)。

鞍点 x² − y² を x 方向に切ると谷、y 方向に切ると山になる 2 つの断面
鞍点は、切る向きで谷にも山にもなる(D < 0)

例題 1f(x,y)=x2+xy+y2−3xf(x, y) = x^2 + xy + y^2 - 3x の停留点と、その種類

fx=2x+y−3=0,fy=x+2y=0⟹(x,y)=(2,−1)f_x = 2x + y - 3 = 0,\qquad f_y = x + 2y = 0 \quad\Longrightarrow\quad (x, y) = (2, -1)fx=2x+y−3=0,fy=x+2y=0⟹(x,y)=(2,−1)\begin{gathered}f_x = 2x + y - 3 = 0,\\[4pt]f_y = x + 2y = 0 \quad\Longrightarrow\quad (x, y) = (2, -1)\end{gathered}
fxx=2, fyy=2, fxy=1,D=4−1=3>0f_{xx} = 2,\ f_{yy} = 2,\ f_{xy} = 1,\qquad D = 4 - 1 = 3 > 0fxx=2, fyy=2, fxy=1,D=4−1=3>0\begin{gathered}f_{xx} = 2,\ f_{yy} = 2,\ f_{xy} = 1,\\[4pt]D = 4 - 1 = 3 > 0\end{gathered}

fxx>0f_{xx} > 0 なので極小で、値は f(2,−1)=−3f(2, -1) = -3 です。

例題 2最小二乗法の S(a,b)=∑i(yi−a−b ti)2S(a, b) = \sum_i (y_i - a - b\,t_i)^2 の停留点は、いつも極小か

Saa=2n,Sbb=2∑iti2,Sab=2∑itiD=4(n∑iti2−(∑iti)2)=4n∑i(ti−tˉ)2\begin{gathered} S_{aa} = 2n,\qquad S_{bb} = 2\sum_i t_i^2,\qquad S_{ab} = 2\sum_i t_i \\ D = 4\Bigl(n\sum_i t_i^2 - \bigl(\textstyle\sum_i t_i\bigr)^2\Bigr) = 4n\sum_i (t_i - \bar t)^2 \end{gathered}

nn はデータの個数、tˉ\bar t は tit_i の平均です。tit_i がすべて同じでなければ D>0D > 0、また Saa>0S_{aa} > 0 なので極小です。D≠0D \neq 0 なので停留点を決める連立 1 次方程式の解はただ 1 つです。さらに SS は 2 次式なので、停留点 pp のまわりのテイラー展開は 2 次で終わり、S(p+h)=S(p)+(正の 2 次式)S(p + h) = S(p) + (\text{正の 2 次式}) が近似なしで成り立ちます。よって全体の最小です(最小二乗法)。

演習 1

f(x,y)=x3−3x+y2f(x, y) = x^3 - 3x + y^2 の停留点をすべて求め、それぞれ極小・極大・鞍点のどれか答えよう。

答えを見る

fx=3x2−3=0,fy=2y=0f_x = 3x^2 - 3 = 0,\qquad f_y = 2y = 0fx=3x2−3=0,fy=2y=0\begin{gathered}f_x = 3x^2 - 3 = 0,\\[4pt]f_y = 2y = 0\end{gathered}

より停留点は (1,0)(1, 0) と (−1,0)(-1, 0)。fxx=6x, fyy=2, fxy=0f_{xx} = 6x,\ f_{yy} = 2,\ f_{xy} = 0 なので

  • (1,0)(1, 0):D=12>0, fxx=6>0D = 12 > 0,\ f_{xx} = 6 > 0 で極小
  • (−1,0)(-1, 0):D=−12<0D = -12 < 0 で鞍点